季節

  • 夜回りの拍子木響く寒の月
  • 室咲や祖母嫁入りの船簞笥
  • 旅立ちの朝の膳に寒卵
  • 亡き犬の爪痕のこる畳替え
  • 寄鍋の宴の果ててうつつかな
  • 足湯して友と語るや星月夜
  • 珈琲豆挽くや香の立つ冬の朝
  • 新米はただ炊けばよし卵溶く
  • 鴉らの険しく鳴くや紅葉散る
  • 仰臥して真昼の銀河鰯雲
  • 霧晴れて山また山に棚田かな
  • あんみつや軒端にちりり鉄風鈴
  • 金継ぎの深鉢に盛る李かな
  • オリーブの畑に煙り凍ゆるむ
  • マドンナの右頬笑むや春の闇
  • ローマ春法皇の窓閉ぢられて
  • 初風呂や昨日の憂ひ昨年のこと
  • 探梅や坂道行きて昼の月
  • 飛行機の見えず雲引く冬の空
  • 月光に落ち葉吹き上ぐ古刹かな
  • ポインセチア古きホテルの長廊下
  • 義経譚残る岬や鳥渡る
  • 末寺より末寺への道曼珠沙華
  • 山行きて水もらふ寺曼珠沙華
  • 白亜紀の秋閉ぢこめし琥珀かな
  • 箱根山道折るごとに夏木立ち
  • 昼顔や海にクレーン突き出せり
  • 水を張る稲田に夏の雲動き
  • 馬車道に友と揃ひの夏帽子
  • 筍の身の清らかに剥かれけり
  • 去年より水面に近き遅桜
  • 葉桜や足湯に交わす土地言葉
  • 春一番衣まとひつく女坂
  • 新雪を踏み行く罪を犯すごと
  • 底冷えや牧師は愛を解いてをり
  • 刈り残る田の水光る小六月
  • 春光や雉鳩の足すきとおり
  • 大学のタワー突き出る新樹光
  • 大学のタワー葉桜突き抜けて
  • を包む地方紙ひんやりと